手のしびれ こわばり


手のしびれは比較的多い症状であり、その原因はさまざまなものが考えられます。

「しびれ」という症状は患者さまごとに表現の意味が異なっていることが多いため、遠絡療法では独自に「痛み」「しびれ」「麻痺」の症状を定義づけて症状の鑑別を行うようにしています。

 

神経には知覚神経と運動神経、内臓神経、特殊感覚神経、自律神経などがありますが、ここでは知覚神経と運動神経を中心に考えます。

知覚神経には表在感覚と深部感覚があり、痛みやしびれに関与するのは主に表在感覚、つまり温度覚、痛覚、触覚、圧迫覚です。遠絡療法では温度覚と痛覚が亢進して刺すような痛み、ヒリヒリする痛み、灼熱感、ビリビリする電撃感、突っ張るような痛みなどを感じる症状を「痛み」、触覚と圧迫覚が低下して触った時や物を持とうとする時などの感覚が鈍くなる症状を「しびれ」として考えます。例えば長時間正座をしたときのことを例とすると、足を触っても何も感じないという症状は「しびれ」、少し時間が経ってビリビリしたりジーンとする症状が「痛み」、立とうとすると足に力が入らない症状が「麻痺」と考えます。この症状の定義から実際に現れている症状を判断し、それを基に原因となっている部位を鑑別します。

 

手の症状が「ビリビリする」、「ジーンとしている」という場合には、これは「痛み」と考えられます。

一般的には頚椎症や胸郭出口症候群、手根管症候群や肘部管症候群、ギオン管症候群といった頸から手までの神経の通り道で神経が圧迫されることが原因と考えられます。これらの症状は主に片側の手に出ることがほとんどで、整形外科的な検査によって診断されます。しかしながら、これらの症状は薬や手術などの治療を行っても改善しないことが少なからずあり、そのような症状の場合は単純に神経が圧迫されているだけではないと推察されます。

 

一方、はっきりした原因の見当たらない手の痛み(診断がついていても治療がうまくいっていない場合)については、遠絡療法では脊髄の炎症が原因と考えており、手の症状の範囲によって頚椎、胸椎、腰椎のどのレベルが原因かを判断します。多くの場合は原因に一致して腰痛や頸肩痛、背中の痛みなども持っていることも判断材料の一つになります。症状が両側性に存在する場合や手全体にある場合には、その原因は脊髄やさらに中枢の視床、糖尿病のような全身性疾患にあると考えられます。

 

手の感覚が鈍い、細かい作業がしにくい、こわばるような感覚がある等の場合は「しびれ」や「麻痺」と考えられます。

上記の「痛み」の原因と同じ部位に加えて、脳卒中やパーキンソン病などの神経変性疾患の可能性も鑑別する必要があります。

 

遠絡療法では神経に関係する生体の流れの圧迫度合いによって現れる症状が異なるとしていて、流れが部分的に遮断された状態は「痛み」、完全に遮断された状態は「しびれ」が発生すると考えます。「麻痺」は脊髄や間脳、大脳という中枢神経の障害か、頸から手までの間で運動神経の線維が遮断されると発生します。

パーキンソン病などの神経変性疾患による手が震えたり、細かい運動の調節ができないという症状は大脳基底核という運動の調整を行っている部位の障害によってあらわれます。大脳基底核が傷害される原因ははっきりしていないことも多く、一般的には治療も難しいと考えられています。

 

遠絡療法では、症状の根本は神経に関連する生体の流れが滞ることによって神経が炎症を起こして発生していると考えています(この炎症は検査ではあらわれないものです)。経絡を応用した治療によって障害されている神経とその周囲の循環を改善し、炎症を抑えて組織の修復を速めることによって症状を改善していきます。

 

遠絡療法による治療法

 

症状の発症の仕方や性状から障害されている部位を特定します。

片側の手首や指の痛み、しびれは脊髄の炎症が原因と考えます。おおよそ手首の小指側と小指は頚椎レベルの障害、手首の中央や中指、環指の症状は胸椎レベルの障害、手首の親指側や母指、示指の症状は腰椎レベルの障害であることがわかっています。

 

症状が長期化して神経の炎症が慢性化してしまうと脊髄の炎症に加えて、痛みや痺れの出ている部分の神経も障害されてしまいます。早期の場合には障害されている脊髄の炎症を抑えれば改善しますが、慢性化している場合は脊髄の炎症と手首、指の炎症を抑えるのに時間がかかります。細かい作業がしにくい、こわばる、指が動かしにくい等のような症状がある場合(片側性)は、しびれによるものと麻痺によるものが考えられます。麻痺の場合は脊髄が原因の場合と大脳が原因の場合がありますので、必要な検査を行って原因となる部位に対応する治療を行います。

 

中枢性の麻痺は神経細胞の圧迫か変性が原因となります。圧迫の場合は回復しますが、変性してしまった細胞の再生はできないため、多くの場合症状の緩和はされるものの完治は難しいといえます。(脳卒中後遺症の麻痺などがこれにあたりますが、遠絡療法を行うことで症状が緩和して生活動作が改善することが多いです。)

 

両側の手に症状が発生している場合は、主に視床や大脳基底核、全身性疾患が原因と考えられます。片側性の症状と同様に、原因部位に対応する治療を行うことで症状の改善します。

 

遠絡療法では、痛みやしびれについてはほとんどの場合で改善が期待できますが、麻痺については完治が難しい場合もあります。特に大脳基底核の障害を中心とした神経変性疾患の場合は、神経細胞の変性が主体のため、症状の緩和や症状の進行を遅らせることは期待できることが少なくありませんが、治すことは難しいといえます。

しかしながら、そのような症状が出ていても神経の変性が小さく、圧迫が主体の場合もあり、このときは遠絡療法が著効します。(パーキンソン症候群やALS、多系統萎縮症の疑いなどと診断されていることが多いです。)遠絡療法は副作用のない治療法ですので、神経難病においてもトライする価値はあると考えます。

 

遠絡療法は障害されている中枢神経の部位に対応する経絡を応用して、神経とその周囲の循環状態を改善し、神経の回復を促すことによって症状を改善していきます。そのため障害されている部位の鑑別が重要なポイントであり、そのために多くの臨床経験をもとにした理論が組み立てられています。神経自体の回復によって症状が改善しますので、多くの場合は根治を目指して治療していきます。

 

元の原因に加えて日常生活の中の姿勢や動作が神経への負荷になっているので、症状の進行を防ぎ、回復を速めるためには症状が悪化する状況をできるだけ少なくすることが大事です。遠絡療法では原因となっている神経の部位に対応する治療点を利用して神経の炎症やダメージの修復を促進しますので、日常生活を気をつけることと合わせることで、保存的に症状を改善させることができます。

 

実際に治療を開始すると治療直後はいったん良くなって、その後時間が経つと良くなったり悪くなったりを繰り返しながら徐々に症状が出にくくなり、治っていくという経過が多いです。早期であれば1~数回の治療で改善することが多く、症状が重く慢性化している場合は、完治状態になるにはおよそ半年~1年くらいが目安となり、定期的なメンテナンスとしての継続治療が必要な場合があります。痛みやしびれといった症状自体は多くの場合1~3か月である程度の緩和ができます。