椎間板ヘルニア


脊椎は通常、頚椎7、胸椎12、腰椎5と仙骨、そして各椎骨間にある椎間板というクッションで構成されています。 

       

この椎間板は層構造をしています。髄核という粘性の球状物の周囲は線維輪という線維組織で覆われていて、各椎骨間で衝撃を吸収すると共にしっかり結びつけて、脊柱全体でしなる動きを可能にしています。これらの後方には脊柱管という脊髄の通り道があり、脊髄から枝分かれした神経が各椎骨間から骨の間の出口を通って全身に走っていきます。加齢や負荷の蓄積などの原因によって椎間板の線維輪の部分が裂けて髄核が出っ張り、それが後ろにある神経に悪影響を及ぼすことで痛みやしびれ、麻痺などを起こすのが椎間板ヘルニアです。

 

椎間板ヘルニアの症状の多くは辛い痛みが伴います。しかしながら、この痛みの原因や起こり方がすべて分かっているわけではありません。MRIなどの画像では大きなヘルニアが神経を圧迫しているように見えていても全く症状がなかったり、反対にヘルニアがなくても症状が出ているということは少なくありません。

 

実際にヘルニアのあった部分となかった部分をそれぞれ圧迫してみたところ、ヘルニアのあった部分では同じように痛みが起こりましたが、ヘルニアのなかった神経根の所ではしびれやだるさを感じるだけで痛みは起こらなかったという実験があります。ここから考えられることは単なる神経の圧迫だけでは痛みは起こらず、神経に炎症が起こることによって痛みが出るということです。この神経の炎症を抑えれば強い痛みは軽くなり、症状はしびれやだるさだけになっていきます。

 

椎間板ヘルニアの治療のもっとも重要なポイントは、神経の炎症を抑えることです。

遠絡療法では神経に関連する流れが滞ることによって神経が炎症を起こすと考えていますので(この炎症は検査ではあらわれないものです)、経絡を応用した治療によって神経とその周囲の循環を改善し、炎症を抑えて組織の修復を速めていきます。

遠絡療法による治療法

 

症状の発症の仕方や性状から障害されている部位を特定します。

椎間板ヘルニアによる痛みやしびれは基本的に中枢性の症状であり、痛みは脊髄が原因、しびれは脊髄と患部の間の神経線維(脊椎神経)が原因と考えます。

 

遠絡療法では今までの多数の症例から、おおよそ上肢の甲側の痛みは頚椎レベル、掌側の痛みは胸椎レベル、親指側の痛みは腰椎レベル、下肢の外側や後面の痛みは腰椎レベル、前面の症状は胸椎レベル、内側の症状は仙椎レベルの障害であることがわかっています。症状が腕や足の全周性や両側性の場合、あちこちに移動するような場合は脊髄、脊椎神経が広範囲に障害されています。

 

椎間板や変形した骨などによる物理的な圧迫が原因であることがはっきりしている場合には、手術などで取り除く必要がありますが、手術をしても痛みが残ってしまうことは少なくありません。

実際には物理的な圧迫よりも、何らかの負荷によって神経に炎症が生じていることがほとんどだと考えられます。この場合は発生している神経の炎症を抑えることで症状が改善していきます。

 

日常生活の中の姿勢や動作が神経への負荷になることが多いので、症状の進行を防ぎ、回復を速めるためには症状が悪化する状況をできるだけ少なくすることが大事です。

遠絡療法では原因となっている神経の部位に対応する治療点を利用して神経の炎症やダメージの修復を促進しますので、日常生活を気をつけることと合わせることで、保存的に症状を改善させることができます。

 

症状が出てからそれほど期間が経過していない場合は、数回の治療で改善する(症状が緩和してもある程度は治療を継続するのが望ましいです)ことが多いです。しかしながら症状が長年にわたり慢性的な炎症となっていたり、日常生活での負荷が大きいような場合は、治すのに多少の根気が必要となります。この場合は治療直後はいったん良くなって、その後時間が経つと良くなったり悪くなったりを繰り返しながら症状が出にくくなり、治っていくという経過が多いです。重症の場合は完治状態になるには3ヶ月~1年くらいはかかりますが、日常生活に影響のない程度に症状が改善されるのは、およそ1,2ヶ月が目安です。