筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群 (ME/CFS)


筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群は、脳と中枢神経の機能障害によって起こる複雑で多系統にわたる慢性疾患です。激しい疲労や衰弱、睡眠障害を中核症状として免疫障害、神経機能障害、認知機能障害、自律神経障害、広範囲の筋肉痛や関節痛などが引き起こされ、日常生活に重大な支障をきたします。日本でも20~30万人が罹患(軽度~重度まで含む)しているといわれ、労作で消耗するために休みながらでないと家事や労働ができないといった軽~中等度から外出困難や寝たきりのような重症例までさまざまな状態があります。

 

欧米で先行する研究によって神経免疫異常による脳内の炎症が原因ということがわかってきていますが、いまだに身体疾患として認知を得ることができずにいるのが現状です。

 

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群は複雑で広範な機能障害を伴う神経系疾患であり、病態は細胞のエネルギー代謝、及び神経、免疫、内分泌系等の調節障害といえます。中心症状は、軽度の作業でも急激に起こる極度の疲労や消耗と症状悪化、それが回復するまでに24時間以上かかり、ぶり返すとさらに持続することです。疲労で障害されるのは身体機能と認知機能があり、重症では音も光もない暗い部屋のベッドに寝たきりという場合もあります。さらに重度の睡眠障害によって回復できません。ほかに情報処理機能障害(計算や読解)、短期記憶障害、全身の痛み、知覚異常、運動障害、免疫低下、消化器症状、頻尿、過敏症、ふらつき、めまい、動悸、起立性調節障害、呼吸困難感、低体温、発汗異常、温度不耐性などの症状も併発することがあります。全身の痛みを主訴とした線維筋痛症を合併する方も少なくありません。

 

現在は確立した治療法が存在しないため、進行を抑えるための保温療法や経頭蓋磁気療法などが行われており、効果のある治療薬などの研究が切望されます。従来の運動療法や認知行動療法、薬物療法は症状を悪化させる場合もあるため、この疾患が疑われる場合は専門医の診察を受けることが重要です。

 

このような中で遠絡療法は、経絡治療を応用することによって中枢神経系の循環を改善することから、効果のある治療法の一つとして期待されます。遠絡療法では中枢神経系に関連する流れが滞り、神経が炎症を起こし、機能異常が生じていると考えます。(この炎症は検査ではあらわれないものです。)疲労感や倦怠感、睡眠障害、うつ症状は視床および視床下部の細胞が機能低下を起こしていることによって起こりますので、障害されている神経とその周囲の循環を改善し、炎症を抑えて組織の修復を速めていきます。

 

遠絡療法による治療法

 

症状の発症の仕方や性状から障害されている部位を特定します。

 

中核となる疲労や消耗、睡眠障害は視床や視床下部の機能異常が原因であり、全身の痛みは視床や脳幹、認知機能や情報処理機能は扁桃体や海馬、大脳辺縁系の機能障害が関与します。また全身の機能障害や調整障害は脳幹や脊髄の障害も関係します。

 

中枢神経系が広範に炎症を起こしていると考えますので、遠絡療法ではまず脳に血液を供給する血管(主に頚部の動脈)を拡張して血流を増やすことに加えて、脳および脳幹の細胞周囲の微小循環の活性化と脳から血液を運び出す血管(主に頚部の静脈)の働きを高めて、大脳・視床・脳幹の血流と循環状態の改善をはかります。さらに障害部位に対応した治療点を応用して、大脳、視床、視床下部、脳幹の神経細胞に関係する流れの滞りを取り除き、炎症があればそれを抑えます。


 

視床、視床下部、脳幹は脳の奥に存在する為、炎症を抑えるために少し時間がかかりますが改善または症状進行の抑制が期待できます。休みながらであれば少しの外出や家事はできる(軽~中等度)、症状が痛み中心(軽~中等度の線維筋痛症)の場合は遠絡療法が主な適応になりますので、診断を受けている場合や疑いの場合、自覚的に心配されている場合はぜひご相談ください。(重症の場合は外出や少しの刺激でも症状を悪化させるため通院治療は困難です。専門医への紹介をできるだけ協力させていただきます。)

 

この病気の場合は日常生活の疲労が極端に強いことが多く、使えるエネルギーが減少していることから、エネルギーをセーブして使い切らないことが大切です。無理をしても良くなることはないばかりか悪影響となることが多いので、自分自身の中での強い運動や仕事は禁物です。

ストレスは交感神経を興奮させて脳への血流を減らすことから、回復を速めるためには交感神経が興奮し続ける時間を少なくすることが大事で、これには体力を消耗しない趣味や好きなことをするなど心身がリラックスして副交感神経が高まることや規則正しい生活が大切です。(運動などは症状を悪化させない範囲で行います。とにかく体力を使い切らないことです。)。

 

複数の原因が絡みあって症状を形成していることが多いことから、回復のためには、治療・セルフケアにおいてできるだけ多くの要素のケアをカバーしていくことが必要です。各要素の回復具合やバランスをみながら徐々に通常の生活に近づけていくことを目指します。

 


 

遠絡療法では原因となっている神経に対応する治療点を利用して、神経細胞の循環不全や炎症の除去、ダメージの修復を促進しますので、日常生活を気をつけることと合わせることで、効果的に症状を改善させることができます。また、遠絡療法は副作用がない治療のため、ペインクリニックや神経内科で処方される内服薬を服用しながらでも並行して治療を行うことができます。