首下がり症候群  Dropped head syndrome (首が上がらない)


医学的に首下がり症候群という病名はありませんが、頭が下がってしまって持ち上げられない、手などで支えないと前を向いていられない、というように頭がうなだれてしまう臨床症状です。原因は多岐にわたり、神経変性疾患や薬の副作用のこともありますが、多くの場合は明確な原因を見つけることができません。単なる猫背やストレートネックとは根本的に異なる病態です。

首下がりの直接的な原因は、

頭を支える首の後側の筋肉の筋力低下・機能不全、または首の前側の筋肉の短縮です。

このような筋肉の機能不全をきたす疾患は、原因を問わず首下がり症候群を起こすといえます。

 

主な原因疾患としてはパーキンソン病、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症、頚椎症、ミオパチー、重症筋無力症、甲状腺機能低下症などが知られています。

また、薬の副作用としてはドーパミン作動薬(パーキンソン病の薬)やDPP-4阻害薬(血糖値を下げる薬)なども知られていますが、実際に首下がりの原因がみつかって診断がつくことは多くありません。

ほとんどは原因不明とされ、診断も治療もできないとされてしまうのが現状です。

 

遠絡療法では、原因の多くは神経の障害であると考えます。

 

脳の身体の動きを調整する部分、または首の筋肉を支配する神経が障害されることによって症状が現れます。障害の範囲と程度によって症状や経過が異なりますが、症状が進行する場合(首下がりだけでなく手足のこわばりやふらつきなど)は神経変性疾患(パーキンソン病、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、ALSなど)の初期症状である可能性も考えられます。

 

これらの神経難病は、現代医学においても進行を遅らせることが中心で治療法が確立していませんが、首下がり症状のような極めて早い段階で、原因に対する複合的な治療を開始することができれば、回復できることも少なくありません。

その他の原因によるもので神経変性がない場合は、原因を取り除くことができれば回復することが多いです。

遠絡療法では、

 

筋力低下による首下がりの原因は、主に延髄の炎症などによって、副神経(首肩の筋肉を支配する神経)が機能低下を起こし、首を支える筋肉の力がなくなって発生すると考えています。さらに延髄の炎症が強まると、脳内にある脳室(髄液が貯留する部位)が腫れて周囲の神経を圧迫します。脳室の周囲は視床などの神経の中枢が存在するため、圧迫が進行すると四肢の脱力、ふらつき、萎縮などが現れます。

 

筋肉の短縮による首下がりの原因は、大脳皮質や脳の深部にある大脳基底核(身体の動きを調節する部分)の障害にあると考えます。これらの部位が障害されると、意思に関わらず筋肉が動いたり、ずっとこわばったままになってしまいます。

  

当院ではどちらの原因も、脳や延髄に関連する流れが滞ることによって神経が炎症したり圧迫を受けて機能低下を起こしていると考えますので、経絡を応用した治療によって神経とその周囲の循環を改善し、炎症を抑えて組織の修復を速めていきます。神経細胞の変性がない場合は回復を目標とし、神経変性疾患の場合は症状の進行を抑制し、神経伝達経路の再構築を促すことによって症状の緩和、改善をはかります。

 

遠絡療法による治療法

 

首下がり症候群の主な原因中枢は、脳幹(橋、延髄)と考えます。症状が首下がりだけである場合はほとんどが慢性的な炎症などによって血流の欠乏と循環状態の悪化により機能低下を起こしているといえますが、神経変性疾患では細胞が変性・脱落している場合もあります。

 

遠絡療法では、まず脳に血液を供給する血管(主に頚部の動脈)を拡張して血流を増やすことに加えて、脳および脳幹の細胞周囲の微小循環の活性化と脳から血液を運び出す血管(主に頚部の静脈)の働きを高めて、脳・脳幹の血流と循環状態の改善をはかります。さらに障害部位に対応した治療点を応用して、脳・脳幹の神経細胞に関係する流れの滞りを取り除き、炎症があればそれを抑えます。さらに温熱療法や首を上げるためのリハビリなども組み合わせて行い、神経だけでなく筋肉や骨格、全身の循環などもあわせて複合的な改善を図ります。

 

首下がりだけが主な症状であれば、延髄の炎症が治まって首の筋力が回復すれば頭が持ち上げられるようになっていきます。脳卒中や神経変性疾患による神経細胞の脱落や変性の場合はこれを完全に回復することはできませんが、治療を行うことで症状の進行を抑えることや、症状が首下がりだけで病名の診断がつかないような早期であれば改善に向かうことも少なくありません。この場合は状態維持のために定期的な継続治療が必要です。

 

延髄の炎症を抑えるためには少し時間がかかることが多いですが回復する可能性は高いと考えます。また日常生活の疲労やストレスは交感神経を興奮させて脳への血流を減らすことから、回復を速めるためには交感神経が興奮し続ける時間を少なくすることが大事で、これには趣味や好きなことをするなど心身がリラックスして副交感神経が高まることや適度な運動や規則正しい生活が効果的です。遠絡療法では原因となっている脳幹、頸椎の神経に対応する治療点を利用して、神経細胞の循環不全や炎症の除去、ダメージの修復を促進しますので、日常生活を気をつけることと合わせることで、効果的に症状を改善させることができます。

 

首下がりは命には支障がないと考えられてしまいますが、日常生活には極めて大きな問題を生じ、結果的に生命に関わる疾患であると考えます。病院で原因不明として治療を受けることができない患者様のために役立てるよう探求を続けます。